NHK まるごと東洋医学SPホントのチカラ2+解説

  • 2019.01.07 Monday
  • 10:56

                  ”寛颪呂覆璽好肇譽垢魎墨造垢襪里?

 

まずは百会の鍼がなぜストレスを緩和するのかの実験です。昭和大学医学部の砂川正隆教授が行った実験が紹介されました。
 
一匹だけ容器に閉じ込められたラットはストレスを溜めて攻撃的になります。このラットの百会に鍼を貼ると、途端におとなしくなるのを観察することができました。

 


  この理由を探るためラットの血液を採り、ストレスホルモンのオレキシン濃度を測ると、百会に鍼をしたラットの方が鍼をしないラットより少ないことが分かりました。


これは百会の刺激が脳の視床下部に働きかけて、ストレスホルモンのオレキシンの分泌を抑えているからだと考えられ、百会にはストレスを軽減する力があることが分かりました。


                

  △覆種で筋肉のこわばりが取れるのか?

 

次に、背中に鍼を刺してなぜ筋肉がゆるむのかを、大阪体育大学体育学部の石川昌紀教授に依頼して実験してもらいました。
トレーニングでパンパンに張ったふくらはぎをエコーで観察すると、筋肉が硬くなって血流が悪化しているのが分かります。


そこに鍼を打ってから再び確認すると、筋肉の血流が改善し、堅さが減っているのが分かりました。

エコーの画像では赤い部分(血流が良く筋肉が柔らかくなっている所)が増えているのが観察されます。
つまり、鍼を刺すことで筋肉の血流が改善し、こわばりが取れるというわけです。
                                       
              なぜ患部から離れたところにも鍼を打つのか?

 

土田晃之さんの治療では腰にズンと響かせる鍼で腰の痛みを取っていましたが、この響かせて痛みを取るやり方は、筋膜治療やトリガーポイント鍼療法と呼ばれるものであり、近年これに関する研究が進んできました。

 

そこでトリガーポイント鍼療法の第一人者、明治国際医療大学鍼灸学部の伊藤和憲教授に実験を依頼しました。

頚肩こりを訴える4人の女性の二の腕を押してみると、4人中3人が頚肩腕に症状の再現を見ました。


  これがトリガーポイントと呼ばれる痛みの発信源です。

次に押したところに鍼をすると、直後に頚肩の凝りが楽になり首も回るようになりました。

このように痛みの発信源を治療すると、広がって感じていた凝りや痛みが解消できるという実験でした。

凝りや痛みが広がるパターンは東洋医学で云う経絡(けいらく)とほぼ一致しており、これを解消するには、痛みの発信源となっているツボに鍼を刺さないと効きません。


西洋医学ではこの痛みの発信源をトリガーポイントとよび、驚くことにツボの場所と約90%一致していることも分かってきました。

以上のような実験から、腰痛治療で様々なところに鍼を打つ理由が明らかにされました。

 

院長の解説


 痛みを強める原因に中枢感作(ちゅうすうかんさ)と言う現象があります。中枢とは脳の事で、感作とは繰り返される刺激によって、それに対する反応が徐々に増大していく事を意味します。臨床的には長いこと痛みに苛まれたり、睡眠不足やストレス、不安などで脳が興奮し、痛みに過敏になった状態のことを指します。「泣きっ面に蜂」って感じです。

 

 主に、自分の身に危険が迫っている状況だと脳が認識して、体中のセンサーをフル稼働して些細な変化も見逃さないように警戒している状態です。なので、こうした脳の興奮を抑えないまま従来の痛みの治療を行っても期待した鎮痛は得られません。

 

 2000年にミステリー作家の夏樹静子さんが書いた「椅子がこわい・私の腰痛放浪記」という本がきっかけとなって心因性腰痛の存在が知られるようになりました。以後、認知行動療法をベースにした腰痛解消本が数多く出版されています。また、最近では心因性の腰痛に向精神薬を投与することを提唱する医師も出てきました。百会の鍼が脳の興奮を抑えるというのは、そうした話題の一つとも言えます。

 

 しかし、百会だけが脳の興奮を抑えるツボではなく、また、百会に鍼を刺せば必ず脳の興奮が抑えられるわけでもありません。実際に鍼灸で脳や自律神経系に働きかけて意図した反応を引き出すには、患者心理との複雑な駆け引きを行いながら物理的条件をそろえていく事になり、そうした作業の一要素としてツボ刺激があります。

 

ですから、より確実に結果を出すには、整えるべき条件を具体的に明らかにする必要があります。痛みと心理については私の長年の研究テーマでもあります。今の段階での成果は当院ホームページ、プロフィールの中の三点アプローチhttp://iihariq.com/plofile/3points/と難問対策のコーナーhttp://iihariq.com/plofile/nanmon/に並べてありますので御覧下さい。

 


 筋肉に鍼を刺すと筋肉がゆるみ、血流が良くなるのがエコーで見えるようになったので、説得力が増したと言えます。ただ、筋トレをした直後に起こる筋肉の変化と慢性の凝りでは性状が同じではないので、始めから凝りのある人を使って治療前後の変化を観察した方が良かったのではないかと思います。

 


 明治国際医療大学の伊藤和憲先生はトリガーポイント鍼療法の第一人者です。トリガーポイントの話題だけで番組が作れるぐらいのテーマなので、今回の取り上げ方はちょっともったいなかったなと思います。トリガーポイント鍼療法について詳しくはhttp://iihariq.com/mps/をご覧下さい。