NHK まるごと東洋医学SPホントのチカラ 1+解説

  • 2018.12.25 Tuesday
  • 19:48


去る9月24日放映されたNHKのテレビ番組「まるごと東洋医学スペシャルホントのチカラ」は、1時間番組が連続2本とこれまでにない随分チカラの入った特集番組でした。録画を見直したら覚えきれないほどの項目の多さに驚きました。もったいないので、私の視点からの解説を入れて整理してみました。

                                       
              鍼灸の実力を土田晃之(てるゆき)さんの腰痛治療で解明

 

慢性腰痛で悩んでいる芸人土田晃之さんが、東京都港区にある北里大学東洋医学総合研究所を訪れ、伊藤剛客員教授から鍼灸治療を受ける様子が紹介されました。


治療は先ず頭の百会(ひゃくえ)と言うツボに鍼を刺すところから始まりました。
百会はストレスを軽減する効果があると言われており、腰痛もストレスの影響も受けることから、先ずこのツボが選ばれたようです。

 


次に、強ばって背骨の並びを歪めている筋肉を鍼でほぐします。治療前は背骨の並びがガタガタだったのが(青い線)、治療後はまっすぐに近くなっています(赤い線)

 


最後に腰に鍼を刺し、ズンとした響きを与えながらツボを刺激して痛みを減らします。さらに灸頭鍼(刺した鍼の頭に艾を付けて燃やす温熱療法)も加えました。これを2週に1回繰り返して腰がほぐれ調子が良くなったと本人が証言していました。

こうした治療手順の根拠がこの後様々な実験で裏付けられていきます。
                                       
 院長の解説↓                                    
                                       

   現代医学では腰痛に対する物理療法(電気、牽引、マッサージ、ホットパックなど)は腰にしか施しません。それは腰痛イコール腰の構造物が壊れて起こるもの、と考えてきたからです。しかし結果として現代医学による腰痛の治療成績は芳しいものではなく、鍼灸を始めとする民間療法に腰痛患者が流れていました。

 

   一方鍼灸では、腰痛を全身的な問題と捉え、腰以外のツボにも施術することで高い効果を上げてきました。その理由を科学的な実験で証明しながら東洋医学のホントのチカラを解明しようとする内容でした。

 

   腰痛は腰の筋肉や骨、椎間板が悪いから起きるだけでなく、ストレスや全身の凝り、腰以外に存在するトリガーポイントからの放散痛などが関係することが最近分かって来ています。しかしまだそれが現代医学の定説になっておらず、治療法に反映されてはいません。

  

   鍼灸治療は経験的にそうした複数の原因を解消しながら治療していたので、言ってみれば現代医学が気づいていなかった問題点にアプローチして効果を上げてたわけです。

 

   例えば百会を鍼で刺激すると、脳を覚醒させる役目をもつ神経伝達物質(オレキシン)の分泌が抑えられ、その結果脳の興奮も抑制され痛みが和らぎます。

 

   また、脊柱の両脇にある筋肉に鍼を刺すと筋肉の凝りがほぐれ、腰に連なる背筋のアンバランスが改善されて、腰にかかる負担が減ります。

 

   さらに、一見腰の痛みに見えて実は他の部位からの放散痛が全体の7割はあると言われていて、その発信源となるトリガーポイントを不活化する事も鍼はしています。

 

   当然腰自体で痛みを発している部位へも施術することで、腰痛を発する複数の原因を一度に解消しているわけです。

これは、痛みを感じている腰を治すのに、全身のバランスを重視しながら治療を組み立ててきた東洋医学独自の視点であり、西洋医学に欠けているものなのです。まさにタイトルにある「ホントのチカラ」です。番組ではこれらを実験で証明する様を映し出していました。

 

   まずは頭のてっぺんにある百会(ひゃくえ)というツボが脳の興奮を抑える効果を持っていることをラットの実験で証明し、さらにラットの血液からオレキシンの濃度を測って、鍼刺激がその分泌を抑える作用があることも証明していました。

 

   次に筋肉の凝りを実験的に作り出し、そこにエコーで観察しながら鍼を刺すと、筋肉の血流が良くなって凝りがほぐれることを証明していました。

 

   また、肩こりのある人の二の腕を探ると、高頻度に肩から腕に痛みを放散するトリガーポイントが見つかることを証明し、そこに鍼を刺すと凝りが楽になる事も明らかにしていました。

 

   複雑な問題を短い時間でテンポ良く伝えようとしたので、一般の方には今ひとつ難しかったのではないでしょうか。解説をするとこういう事になります。

 

   ところで、鍼灸を専門にしている者としてはツッコミ所が満載でしたが、まずは良くここまで取材してまとめてくれたものだと感心しました。