原因不明の慢性症状 7 絞扼性神経障害によるもの

  • 2014.06.22 Sunday
  • 11:09

   絞扼性神経障害の治療

 トリガーポイントと並んで問題となるものに絞扼性神経障害(こうやくせいしんけいしょうがい)があります。トリガーは筋繊維レベルのコリによる障害なのに対して絞扼性神経障害は筋肉が硬くなる事でその中を通過する神経と血管が締め付けられて起こる症状です。絞扼される部位や程度によって異常感覚、鈍痛、疼痛、痺れ、だるさ、冷感、灼熱感等が起こり、神経の変性が進むと運動障害、筋力低下、筋萎縮などを引き起こします。 軽いうちであれば、鍼灸治療で効果は劇的に現れます。症例を紹介しましょう。

太ももの痺れ 60代 男性 
 重いものを持ったせいか左太ももの前から内側がピリピリと痺れて感覚が鈍り歩きづらくなった。昨日整体して腰は楽になったがしびれはまだ残っていると言って治療に見えました。左足の付け根(ソケイ部)が硬くなって押すととても痛がりました。太ももの前から内側にかけて触っても感じにくい場所が見られました。
 所見からすると大腿神経が筋肉の緊張で締め付けられて起こる絞扼性神経障害(こうやくせいしんけいしょうがい)のようでした。足の付け根の硬くて痛いところに鍼をして腰の深いところの緊張を解したところ、その場で痺れが半減し、三回治療して治りました。 
 
肘内側から前腕の痛み   50代 男性  
 一月前から右肘内側から前腕が痒いような疼くような感じがしている。頸を動かしての痛みやつれは無く、肩の後ろと肘内側の上下を押すと前腕の痺れが見られたのでそこに置鍼した。2診目では上腕の痛みは消失したが、前腕内側の症状は変わらなかった。そこで肘内側の圧痛に鍼やパルスを行ったところ前腕中央の痺れは消失し、内側に鈍痛が残った。
  ところがそれ以上症状がよくならなかったので4診目に思い切って尺骨神経溝(神経が通る溝)に刺鍼したところ前腕部の痺れはすぐに消失した。

腕と中指の痛み  50代 女性
 3日前から肘から前腕後側と左中指が痺れる。昨年手首を捻挫したせいかと思い整形を受診しレントゲンでは異常なかった。初診時はさしたる所見が無く、本人が気になるという所に刺鍼し響かせたらしびれが3割に減った。
  ところが除雪機械の操作で3診目には朝方中指のジンジンする痺れで目が覚めると訴え頚肩腕に鍼と灸をし、肘に通電をしたら上肢外側の違和感と中指のピリピリ感が残った。この時点でようやく手根管症候群を示す所見(手根部のチネルサイン)が出たので前腕の緊張部と手首の内側にパルスと施灸を追加したら症状が消失し、6診で治療を終了した。

  症例の経過を見ても分かるように、最初から診断がつくような所見が出揃うことは希で、治療点を見つけるまでには丁寧な診察を繰り返す必要があります。また、複数箇所絞扼されていることが多くさらには、神経根症とよばれるより重い病態を併発していることも多いので、悪いところは複数あると思って診察する必要があります。
  尚、お医者さんの方での治療の目安を成書にみると、「急性に発症したものは局所の安静、消炎剤、ステロイドの局注、装具を使っての関節の安静で3ヶ月ほど経過観察をする。これで改善しないものは手術の対象とする。慢性化して変性型障害に陥ると手術を行っても筋萎縮などの回復は不良となるので早期発見早期手術が原則」とあります。
  しかし患者さんたちの多くは切らないで治す方法を希望し、表現に語弊はあるものの、いわゆる「様子を見る」式の保存療法に満足できず鍼灸院を受診し良くなっている方が沢山います。
  神経の変性が進んだ慢性例では手術以外に回復を望むのは困難ですが、患者心理としては医者から手術を勧められても最後の望みを掛けて鍼灸院を受診することは多いものです。こうした場合、筋肉の萎縮や細かい指の動きの程度を正確に評価しながら期間を区切って鍼灸治療を試みます。それで回復の可能性が無いと判断されたものには患者さんを納得させて専門医に紹介する事となります。やるだけやって納得した上での手術は良い結果をもたらします。


          

まとめ
   今回は医療機関で曖昧にされている慢性の症状で鍼灸院で解決しているものの要素は3つあると言うことを紹介しました。こうした事態に陥らないために、鍼灸院を上手に利用していただければ幸いです。

コメント
コメントする