原因不明の慢性症状 2 習慣によるもの

  • 2014.07.15 Tuesday
  • 10:50
問題行動が習慣化していた症例   

 このタイプの特徴として、所見を取っても大して悪くはなくどんな治療もそれなりに効果は出るものの治りきらずに症状が長引く特徴があります。問診と症状から問題行動が推察できる場合はそれを指摘して改善させながら治療すれば、あっさり治ってしまいますし、症状のぶり返しも防ぐことが出来ます。初診で問題行動が特定できないことも多いものですが、「ここがこんな風に傷むにはこんな身体の使い方が多いのですが、、、、、」とヒントを出しておけば、次回来院時にはご本人が問題行動に気がついて報告してくれることが多いものです。

症例5 膝痛 60代女性  
 2〜3ヶ月前から立ったり座ったりするときに膝に痛みを感じた。その後一時自然に寛解したが、1週間前から再発した。外科医院でエコーとレントゲンを撮ってもらい、炎症と言われ湿布と薬をもらったが効果はない。立っている分には膝が苦しいだけだが座れない。と言って治療に見えました。

症例6 腰下肢痛 50代男性   
 この方は歯科医です。慢性の右腰下肢痛を訴えて来院しました。思い当たる事は以前ターザンのまねをして蔓にぶら下がって遊んだ時に腰から落ちて尻餅をついたことぐらいしかないと言います。所見から腰よりも股関節に負担がかかってるように見えたのですが、重篤な疾患が隠れているとは思えなかったので、愁訴の出ている所を解しながら経過を見たものの良くならず、決まって朝起きる時が一番痛みが強いとの事でした。

症例7 咳が止まらない 40代 女性  
 ひと月前から日中だけ咳が出る。内科(胃腸科)で気管支炎と診断され投薬と点滴するも変らず、1週間後別の内科(循環器科)で抗生剤をもらうも効かず、さらに1週間後また別の内科(循環器科)で血液検査をしてもらったが喘息やアレルギーの反応は無いといわれ、さらに10日後の今日、呼吸器科でレントゲンと血液検査を受けても異常なく、咳止めをもらったが咳は止まらない。最近は微熱があり、36.9度〜37度ある。鍼灸で何とかならないかと治療に見えました。  

 さて、最初の方は検査で膝の炎症と言われたもののクスリは効かなかったケースです。二番目の方の自己診断は尻の打撲なのですが、鍼が効かなかったケースです。三番目の方は精神的な問題から問題行動が習慣化したケースです。これらをどうやって治したか詳しく見てみましょう。

症例5      
 両膝に水がたまっており、特に左が多く、左膝蓋骨(膝の皿)の上端から太ももの前面に強い圧痛が見られました。 膝の皿と太ももの骨が接するところの軟骨が削れて痛むタイプの膝痛でした。ゴルフが趣味で、足腰の鍛錬に毎日スクワットをされていたそうです。このタイプの膝痛にスクワットは逆効果なので、止めてもらうことにしました。  
 治療は太ももの筋肉(大腿直筋)をほぐし、膝周囲に刺激して痛みを減らすように鍼をして、膝のアイシングを追加しました。6日後いらしたときには階段の上り下りが楽になり、2週間後には水もだいぶ引き痛みも減りました。太ももと内股の強化運動を教えしてアイシングも続けてもらいながら治療をし、1ヶ月後には3日間ゴルフを見に行って毎日2〜3万歩歩いたが大丈夫だったと喜ばれました。

症例6 
 本人は尻餅の後遺症だと思い込んでおり、再三それが原因だと主張するために、どうしても私の目は腰に引かれがちになったのですが、いつも朝起きがけが悪いとなると、寝てる間に何か負担をかけていることになるので、「どんな格好で寝ていますか?」と訪ねたら、「私は寝相が悪いんですよ。うつ伏せで、右足を腹の下に畳んで寝る癖があるんですよ」と言う答えが返ってきました。  
 何でそんな格好で寝るの?と言いたくなるのですが、右の股関節を屈曲したまま体重をかけて寝ているのですから朝股関節周りが痛くなるのは当然です。少し寝づらくても寝相を治すように指示したら治療の効果が上がって愁訴は無くなってしまいました。 それまで何年も同じ姿勢で寝てきて何の問題も起こさなかったのに、何故?と患者さんは思いがちですが、身体の老化に伴い、それまでなんでもなかった寝相が大きな負担になってしまっていたと言うケースは少なくありません。  
 寝相だけに限らず、無意識で行う動作が痛みの原因になっている事は多いものです。それを見つけて指摘する。ただそれだけの事ですが、これが患者さんの利益を守ることにつながります。    

 家庭医にとって、患者さんが起こした障害の原因を推察するには多岐に渡る人間の動作や習慣を熟知している必要があります。症状から患者さんが気がつかない問題行動を言い当てるのはある種名人芸と言えます。  
 しかし、こうした名人芸をもった家庭医に誰もなろうとはしません。先に述べた患者さんの個人的な推察を聞き出してから診察を始める事や、症状を引き起こす問題行動を見つけ出す作業は時間がかかる上に、一切保険点数にはなりません。  
 つまり保険診療を行う医師にとって自分の収入を減らす行為なのです。現在の保険医療制度下では構造的に起こり続ける問題だと言えます。だからこそ我々鍼灸師がこうした問題を適切に処理する立場に立つべきだと私は考えて実践しています。

症例7 
  待合室から聞こえる咳は、痰の絡みがなく、喉がいがらっぽくて気になるために咳払いをしている様子でした。わずか1ヶ月の間に4件もの開業医を回り何の薬も効かず、検査で悪いところも見つかっておらず、熱と言っても37度ぐらいの微熱で夜間は咳が出ない事などから、心因性(精神的な原因)の咳を疑いました。  
 家族構成を伺うと女手一つで高校生と専門学校生を育てておられるとのこと、介護職である事などから今自分が寝込むわけにはいかない!と言う切迫感が伺い取れました。咳をする様子から東洋医学的には梅核気(ばいかくき)、西洋医学的には咽喉頭異常感症と呼ばれる症状でした。  
 これは、精神的な緊張が高まるとのどに何かが引っかかっているような感じがして咳払いを繰り返すのが特徴で、この方の場合は空咳にまで発展したもののようでした。  
 ご本人にはできるだけ咳をしないように心がけてくださいとお話をし、喉周りや、身体の緊張を解す鍼をしました。治療が終わるころには咳払いが減り、5日後に見えたときの話では、咳をしたくなったら飴をなめたり水を飲んだりして我慢したら翌日には咳が止まってしまった。今は時々咳払いをするぐらいで落ち着いているとのことでした。その2週間後まで経過を見ましたが、症状の再現が無かったので治療を終えました。  
 結論として、元々肺や気管支には異常はなく、精神的な緊張や不安から喉に違和感を感じ咳払いを繰り返す内に癖になってしまったようでした。4件の医院でどの医師も患者さんの精神状態に目を向けず、検査結果で異常がないにもかかわらず安易な投薬でお茶を濁す事を繰り返してきたため、患者さんが医者を信頼できずにドクターショッピングを繰り返す結果となっていたようです。  

 
 
 ところでこうした問題行動を沢山知ることで問題解決のスピードが速まるものです。これまでの経験からどんな行為が問題になるのかを並べてみましょう。

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