玉川病院研修生時代の思い出 3

  • 2006.03.31 Friday
  • 23:19
鑑別診断の習得
嵐のような勉強の二年間が過ぎると、病院で何が行われているか、医者が何を考えているかが一通り分かるようになり、医学常識がわきまえられるようになりました。そこで三年目からは鍼灸では治せない疾患の鑑別が出来るように診断技術の習得に力を入れました。

まず、代田、本田両先生について内科の診察技術全般と、レントゲン写真をはじめとする様々な画像の見方や検査数値の読み方を実際の患者さんを通して教わりました。

代田先生は誤診を防ぐためには人の診断を鵜呑みにせず、自分で納得するまで原因を追求するように常々指導されました。また、検査数値を盲信せず、患者さんの訴えを良く聞き、身体を良く診ることを強調されていました。こうした勉強は鍼灸師だからといって妥協のない真剣なものでした。お陰で私たち鍼灸師が医師の診断に異を唱えて誤診が発見される事も少なくありませんでした。

処方を見れば医者の考えが分かる
薬の勉強も必然的にさせられました。もちろん漢方薬についても教わりました。絶対必要な薬と、飲んでも飲まなくても良い薬のあることも知りました。患者さんの思いこみで大事な薬を止めると、どんなことが起こるのかもこの目で見せてもらいました。

米沢では患者さんが検査の結果も薬の内容も、病名さえも理解せぬまま治療を受けているケースが多いのですが、どんな検査をしたか聞いて薬を見せてもらえば、主治医が何を考えているのか大体分かるようになったのも病院での勉強のお陰でした。

恩師の背中で仁術を学ぶ
代田先生は治療の効果を冷静に評価することも教えてくれました。よくカンファランス(症例検討会)で「この患者に何が効いたと思う」と先生から聞かれることがあり、そうしたときは大概私が考えてもいない答えが返ってきて、目からうろこが落ちる思いをしました。「医者は科学者である。手前味噌な評価を下してはならない」と言うのが先生の考えでした。 

代田先生も本田先生も、患者さんの話をよく聞かれるので、精神的な問題を抱える人も多く受診していました。私達研修生もそうした患者さんの治療を担当するために精神科疾患についても勉強させられました。実にさまざまな患者さんとのやり取りを見せてもらいながら、心のケアーのしかたについても多くのことを学びました。 

代田先生の診療姿勢は肩の力を抜いた自然体で、いつもいたずらっぽく笑いながら、冷静な頭と熱いハートを持って飄々と仕事をこなしておられました。患者さんにいらぬ気遣いをさせず、自分への悪態でもなんでもしゃべらせ、気持ちを軽くする診療でした。

一方本田先生は、病める人を救うため全身全霊で治療に当たり、清貧を旨とし、仁術としての医療を極めんとする求道者のような方でした。その真摯な診療によって起死回生の治療を施されることも多く、「本田先生に診て頂ければ死んでも本望だ」と患者さんに言われるくらいでした。

こうしたお二人の背中を見ながら医療者とは何かを学ばせてもらいました。
                            つづく
コメント
コメントする