子育てのお手伝い 小児はりの話し

  • 2015.09.11 Friday
  • 01:26


来院した時はお母さんにしがみついて泣いていた子が、「カトーセンセー」と言いながら待合室に入ってくる姿を見るのは何とも嬉しいものです。治療がうまく行ってるのはその様子ですぐに分かります。

子供の診察は待合室で遊びながら始めます。私は子供に関係なく積み木やブロックで遊びながら、お母さんにそれまでの様子を聞いていきます。初めてのお母さんも子供を遊ばせながらの問診なので、リラックスして話してくれます。

子供の警戒心が解けたのを見計らって治療室に誘います。アンパンマンやバイキンマンも一緒です。夜泣きは子供のストレスが原因しているので、問診の中で原因探しをします。 

さらに治療室では安全を確保して子供の好きにさせ、お母さんと一緒に子供を観察し日頃困っている事の解決策を考えていきます。
コツは、「遊びで子供を誘導する」です。まだ分別のない子供に「あれダメ、これダメ」と躾けてもうまく行きません。それより良い行動を遊びに変えて楽しくやらせてしまうことです。それを習慣化できればもう理屈は要りません。実際に私がやってみせることでお母さんも納得するようです。

最近子育ての素晴らしい本を見つけました。フレーベル館から出版している「ていねいなまなざし」でみる乳幼児保育です。東京家政大学ナースリールームの井桁容子さんが書いています。子育てで悩むお母さんにはお薦めの本です。人はどう育っていくのかを細やかな視点で丁寧に解説してくれます。読んでいるだけで心が温まり育児の楽しさを教えてくれる名著です。



 

患者の心医者知らず

  • 2007.04.23 Monday
  • 23:40
以前腰痛で治療したことのある患者さんが半年振りに訪ねてきた。雪の中で足がぬかり、転んで圧迫骨折を起こしたそうだ。幸い3ヵ月後の再検査で骨は治っていると言われたのに腰の痛みが取れないので、本人は他にどこか悪いところがあるのではないかと、大腸検査や婦人科の検査を受けたが悪いところが見つからなかったそうである。

痛みは長く腰掛けていた後や十分ぐらい歩くと腰が辛くなるもので、潰れた所を頂点に背中がかなり丸くなっていた。ひと通り疑わしい病気は無いことを確認しているし、それまでの経過と所見から圧迫骨折の後遺症と骨粗しょう症による腰痛と医者が判断したのだろうと思ったのだが、本人はそれに納得しておらず、この後何の検査をしたら良いのかと私に訊ねてきた。
「変だなー。単なる骨折の名残で痛いとはっきりしているのに、なぜこれ以上の検査を望むのだろうか」と気にかかった。

そこで「癌がどこかに隠れていないかと心配なのか?」と聞いてみると「そうだ」と言う。「両親や親戚で慢性の腰痛が実は癌だったと言った例があったのか」と聞くと、「そうではないが、人に肝臓癌だった腰痛の話を聞かされたことがあるので心配している」との事。「でもその辺の検査はほぼ終わって全て白だと結論が出ているのに、まだ納得してないのはなぜなのか?」と聞いてみたら「整形外科医は3ヶ月目の検査で骨はちゃんとくっついていると言ったのに」と言う。

なるほどそれで話は読めた。この方にとっての圧迫骨折は腕の骨をボキッと折ったイメージと重なっていたので、医者が使った「骨はくっついた」と言う表現は「患部は完全に治ったからもう痛くは無いはずだよ」と解釈されていたようだ。もう痛くは無いはずのところがまだ痛いのはもしかすると癌が隠れているからではないかとかえって心配してしまったらしい。

だから検査で異常が無いといわれても安心するどころか、あるはずの癌がまだ見つからない。こんなことをしていると手遅れになってしまうと一人途方にくれてしまったようだ。

こういうことは良くあることで、医者はこちらの説明に対する患者さんの反応を良く観察する必要がある。今ひとつ分かっていないとか、納得していない様子が見えたときはもう一度何が心配なのか問いたださないといけない。忙しさにかまけて、お医者様が言った事は信じるだろうと思い込んでそうしたサインを放置しておくと後で患者さんは思わぬ方向へ走っていってしまうことになる。

患者さんは様々なことを聞かされてやってくる。大概はガセネタだが、そうした思い込みや誤解を見つけたらそのつど解消しておかないと、竹に木をつないだような摩訶不思議な理論で凝り固まってしまい、後からその考え方を修正するのはえらい手間がかかる。だから面倒でも見つけたその場で正確な知識と入れ替えておく必要がある。

また、素人の患者さんに理解しやすいようにと、たとえ話で説明する医者もいる。これは気おつけないとたとえ話のうえに患者さんなりの推量が入った理屈が展開されて厄介な事態が発生することもある。
だから私は飲み込みの悪い患者さんほど安易な例え話をしないで、正確な医学情報を繰り返し説明することにしている。チャンスを捉えて何度でも正確な情報を話せば次第に分かるものである。
 

養生医者の真骨頂

  • 2006.03.23 Thursday
  • 23:40
手前味噌な話し

耳鳴りで治療していた患者さんが最近足の親指が痛むことがあると訴えました。さて外反母趾か痛風かと指を診てもそれらしい様子はありません。たまに痛くなってはいつのまにか治るとのこと。

「もしかしてお風呂で身体を洗う時、椅子に腰掛けずに片膝立になってませんか?」と尋ねると「何で分かるのですか」との答え。そこでバスマットを敷いて正坐するか椅子を使うように話したのですが、本人は半信半疑で帰宅しました。しかし次に治療に見えた時には指の痛みが減って、原因がお風呂での姿勢だったことを実感したそうです。

彼女の足の指の痛みから入浴中の癖に発想がいく医者はそういないでしょう。私は臨床でこうした癖の発見をとても大事だと考えています。たった一言で今後の痛みを予防し、かかるはずの医療費や時間、薬による身体の負担などを未然に防げるからです。

この患者さんが痛み止めを飲めば一時的には痛みが取れたかも知れませんが、原因を見つけておかなければまた同じことの繰り返しになったでしょう。検査だけでは生活習慣の中に隠れている原因を見つけ出すことはできません。

患者さん自身が意識していない癖を見つけるのは、幅広い知識と経験そして洞察力を必要とします。「検査で異常がないからどこも悪くない。心配するな」で終わりにして良いと考えている医者には救えない愁訴です。

私は「検査で異常がないのに症状が取れないのはなぜか?」から自分の診療をスタートさせます。本当の原因を見つけ出す姿勢を崩さなければ必ず見つかるものです。